
当法人は2025年5月、高知県・奥物部の山間地域において自生する実生ゆずの調査を行いました。
本調査は、実生ゆずの原種的な姿と生態を把握し、地域資源としての価値や課題を明らかにすることを目的としたものです。
調査の背景
実生ゆずは千年を超える歴史を持ち、日本の里山文化を象徴する果樹のひとつです。特に高知県の山間地には、自然に根を下ろし、人々の営みと共に育まれてきた実生ゆずが数多く残されています。しかし近年、農村地域の高齢化や後継者不足により、管理が行き届かず放置される樹木も増えています。その現状を正しく記録し、今後の利活用につなげるため、現地調査を実施しました。

現地の様子
5月の奥物部は新緑がまぶしく、山々は深い緑に包まれていました。急斜面に根を張る実生ゆずは、樹齢数十年を超える高木が多く、力強い生命力を感じさせました。この季節の果実はまだ青く小さいながらも、枝葉に漂う香気は鮮烈で、確かに原種ゆずの存在を物語っていました。
農家から伺った実情
- 収穫の労力が年々増し、高齢化に伴い維持が難しくなっていること
- 高木化した樹木は安全に果実を採取することが困難であること
- しかし、その香りや成分の豊かさは他に代えがたく、価値を再評価してほしいという願い
調査では農家を訪問し、当地の実情を直接お伺いしました。こうした現場の声は、私たちの活動を方向づけるうえで極めて重要な示唆となります。
今後の展望
今回の奥物部での5月調査は、実生ゆずの「現場に生きる姿」を確認し、農家の方々の経験や課題を共有する大切な機会となりました。
今後は、低木栽培の研究や耕作放棄地再生の取り組みと連携し、地域資源としての実生ゆずを守り活かす方法を探ってまいります。
実生ゆずが持つ価値を未来へ引き継ぐために、科学的調査と現地の知恵を結び合わせながら、継続的に研究と活動を進めてまいります。