低木栽培技術の視察報告

2025-06-02 ピックアップ活動報告

2025年6月、高知県・奥物部において、ゆずの低木栽培(樹高抑制・安全収穫)に関する現地視察を実施しました。

本視察は、実生ゆずを含む柑橘栽培の持続可能性を高めるために、先進的な樹冠管理や台木選定、作業安全の実装例を学び、研究・普及活動へ反映することを目的としています。

視察の背景と目的

ゆずは樹齢とともに高木化しやすく、収穫・剪定・病害管理の労力や危険が増大します。地域の高齢化や労働力不足を踏まえると、樹高を抑制して安全かつ効率的に管理できる体系が求められます。そこで奥物部の生産現場で実践されている低木栽培(矮化・樹冠管理・省力化設計)の知見を収集し、研究と現場支援の両面に活かすことを目指しました。

現地の状況(6月の生育相・気象条件)

視察時の奥物部は梅雨入り前後の高湿・中温条件で、当年枝の伸長が旺盛でした。新梢の硬化が進み始める時期で、夏季に向けた樹冠形成と病害予防の初期対応が重要になるフェーズでした。圃場は南~南東向きの緩~中斜面が多く、表土は腐植に富むローム質で排水改良とマルチングが併用されていました。

現場からの示唆

低木栽培の鍵は、単一の技術ではなく「樹高設計・骨格誘引・剪定更新・栄養管理・防除・動線設計」を一体として最適化<することにあります。特に奥物部の地形・気象条件では、排水・風通し・作業安全の三点が収量と品質の安定化に直結していました。また、低木化により作業の可視化が進み、病害の早期発見・対応が容易になる効果も確認されました。

当法人の今後の対応

  1. 試験区の設置:樹高・主枝数・列間/株間・わい性台木の条件を変えた比較試験を計画。
  2. 作業プロトコル整備:剪定・摘果・防除・施肥・安全管理の年間手順書(梅雨期版を含む)を作成。
  3. 教育・普及:フィールド講習・動画教材化により、地域の農家や次世代への技術継承を推進。
  4. 評価指標の導入:樹高・作業時間・事故ゼロ・収量/品質・機能性成分の保持率などを定量評価。

謝辞

視察の受け入れとご指導を賜りました奥物部の生産者・関係各位に心より御礼申し上げます。
現場での知見を大切に、研究と普及の両輪で低木栽培モデルの社会実装を進めてまいります。

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